類聚方広義・第二木曜会  2009・6・11

●6月11日は三十三頁前半の沢瀉湯から読みました。

沢瀉湯茯苓甘草湯

三十三頁前半
標註                                       類聚方
支飲冒眩の症にて、其の激しき者、昏昏揺揺として、暗室に居るが如く、舟中に坐するが如く、霧裏を歩くが如く、空中に昇るが如く、居屋牀蓐にも、回転して走るが如く、瞑目斂神すと雖も、亦復然り。此の方に非ずんば治する能わず。




胃反は、固より難治の症にて、此の方の能く治する所に非ず。斯の方は特だに其の吐後に渇して水を飲まんと欲し、心下悸し、小便不利する者を治すのみ。大抵
沢瀉湯
苦しむに冒眩、小便不利する者を治す。
沢瀉 五両
 二銭 朮 二両 八分
右二味、水二升を以って、煮て一升を取る。分温再服す。水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。
心下に「支飲」有り。其の人苦しむに冒眩、

茯苓沢瀉湯
心下悸し、小便不利し、上衝、及び嘔吐し、渇して水を飲まんと欲する者を治す。
茯苓 半斤
 一銭二分 沢瀉 四両 六分 甘草 二両 三分

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三十三頁前半解説
標註                                            類聚方
昏昏揺揺(コンコンヨウヨウ)=暗く感じふらつく
霧裏(ムリ)=霧の中
居屋牀蓐(キョオクショウジョク)=室内にいて寝起きする
瞑目斂神(メイモクレンシン)=目をつぶり精神を安定させる
冒眩(ボウゲン)=頭にものを覆うようでふらつく

 三十三頁後半
標註                                       類聚方

胃反を患う者は、其の人心下或いは臍上にチョウ結有りて、而して胃府を圧迫し、或いは大筋臍をみて上下に亘り、胃府の消化の機を、妨礙するを以ってなり。故にチョウ結を削平非ずんば、決して全治を得られざるなり。間々チョウ結潜伏して診得し難き者あり。又回虫に因る者有り。宜しく其の腹状を審らかにして処方を誤る無かるべし。胃反は、唐以降反胃と称す。又飜胃に作る。翻胃とも作る。反 飜 翻 の義同じ。


玉函に、茯苓三両に作る。今之に従う。
桂枝 二両 三分 朮 三両 四分五厘 生姜 四両 六分 右六味、水一斗を以って、煮て三升を取り、沢瀉を内れ、再び煮て二升半を取る。八合を温服す。水二合五勺を以って、先ず五味を煮て、八勺を取り、沢瀉を内れ再び煮て六勺を取る。日に三服す。
「胃反。」吐して渇し、水を飲まんと欲す者は、
為則按ずるに、当に心下悸し、小便不利の證有るべし。


茯苓甘草湯
心下悸し、上衝して嘔する者を治す。

茯苓 二両 一銭二分 桂枝 二両 八分 生姜 三両 一銭
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三十三頁後半解説
標註                                            類聚方
臍を挟み=臍をさしはさむ
妨礙(ボウガイ)=さまたげる
本文では全六味を入れて煎じ、後に沢瀉を入れ再煎すると書いていますが、榕堂先生は先ず五味を入れて煎じ、後に沢瀉を入れて再び煎じると追記しています。

三十四頁前半

傷寒汗出の章は、発熱脈浮数、小便不利等の症の脱するに似る。此の方は多く生姜を用うは、則ち渇せずの上に、亦 嘔而 の二字脱するに似る。特(た)だに汗出る者、豈此の方を用うべけんや。其の錯脱有るや、明らかなり。 二分 甘草 一両 四分
右四味、水四升を以って、煮て二升を取り、滓を去り、分温三服す。水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。
「傷寒。」汗出でて渇す者は、五苓散之主る。渇せざる者は、茯苓甘草湯之を主る。○「傷寒。」厥して心下悸する者は、「宜しく先ず水を治すべし。当に茯苓甘草湯を服すべし。卻って其の厥を治す。爾(しから)ざれば水漬かりて胃に入り、必ず利を作さんなり。」
為則按ずるに、当に衝逆し嘔吐の證有るべし。

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三十四頁前半解説
標註                                            類聚方
不爾=不然=シカラズンバ  (爾=耳=而己=ノミ:文末に用いる時)

沢瀉
オモダカ科 サジオモダカの根茎。沢瀉の字は沢の水を逐う(瀉)という意味から名づけられたといわれます。
成分はデンプンやアミノ酸、アリソールなどが含まれ利尿作用やコレステロールの低下、血糖降下の作用があります。
浮腫みや胃内停水、排尿困難、下利などに用いられます。処方では五苓散、茯苓沢瀉湯、沢瀉湯、半夏白朮天麻湯、八味丸、六味丸に配剤されます。

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