類聚方広義・第二木曜会  2009・5・14

●5月14日は二十九頁前半の苓桂甘棗湯から読みました。

苓桂甘棗湯苓桂五味甘草湯・苓甘五味姜辛湯・苓甘姜味辛夏湯・苓甘姜味辛夏仁湯・苓甘姜味辛夏仁黄湯


二十九頁前半
標註                                       類聚方
目症にも、亦効有り。
痰飲は、当に淡飲に作るべし。
徐彬(ひん)の曰く、支は、トウ定去らず、痞状の如きなり。
短気云々、二方は同じく小便を利すると雖も、其の主治する所同じからず。此の方は心下の水飲を主る。故に此の症に施し効有り。八味丸は小腹不仁を主る。故に之に於いて心下停飲短気の症に用うるに、絶えて其の効無し。夫れ小腹不仁は、特(ひとり)水毒のみならず、血も亦循らざるなり。八味丸の効有る所以なり。能く事実を履(ふみおこな)いて、親しく之に於き病者に験(ため)し、自ずから之を知れ。
右四味、水六升を以って、煮て三升を取る。滓を去り、分温三服す。水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。
「傷寒、若しくは吐し若しくは下した後、」心下逆満、気胸に上衝し、起きれば即ち頭眩、脈沈緊、汗を発せば則ち経を動じ、身振振揺と為す者、
○心下に痰飲有り、胸脇支満し、目眩す、
○夫れ短気し微飲有り、当に小便に従い之を去るべし、苓桂朮甘湯之を主る。「腎気丸」亦之を主る。


苓桂甘棗湯
心下悸し、而して攣急上衝する者を治す。

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二十九頁前半解説
標註                                            類聚方

 二十九頁後半
標註                                       類聚方






奔豚は、悸して衝逆甚だしきを謂う。説は桂枝加桂湯標に見ゆ。此の症は間々瀉心湯を兼用すべき者有り。宜しく審らかに察すべし。
茯苓 半斤 一銭二分 甘草 三両 四分五厘 大棗 十五枚 五分五厘 桂枝 四両 六分
右四味、水一斗を以って、先ず茯苓を煮て、二升を減じ、諸薬を内れ、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。 水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。
「発汗の後、」其の人臍下悸するは、「奔豚を作さんと欲す。」
為則按ずるに、当に腹拘急の證有るべし。

苓桂五味甘草湯
心下悸し、上衝し、咳して急
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二十九頁後半解説
標註                                            類聚方



三十頁前半
標註                                       類聚方

以下五方、其の症を論じ薬を用う。其の言は純粋ならず。然れども痰飲咳嗽喘急等の症に、撰用すれば、皆効有り。宜しく症に随い南呂丸、陥胸丸、十棗湯、白散、紫円等を兼用すべし。
此の方は、苓桂朮甘湯と、僅かに一味(かふる)のみ。故に其の症も亦略相似る。学者宜しく其の方意方用を意会(いかい)し、以って之を施すべし。
小青龍湯は内飲外邪が、感動発され、咳嗽を作る者を主治す。以下五方は、発熱悪風、頭痛乾嘔等の外候無く、但内飲にて咳嗽、嘔逆、鬱冒、浮腫等を発す者を主治す。若し咳家の
迫する者を治す。
茯苓 桂枝 各四両
 八分 甘草 三両 六分 五味子 半斤 一銭
右四味、水八升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、分温三服す。水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。
ガイ逆倚息して、臥するを得られずは、小青龍湯之を主る。青龍湯下し已わり、多唾口燥し、「寸脈沈、尺脈微、」手足厥逆し、気小腹より胸咽に上衝し、手足痺れ、其の面翕然として

三十頁前半解説
標註                                            類聚方

易=(動詞)かえる!換わる!変化する!
意会(いかい)=文章全体の意図がはっきりつかめること
ガイ=咳
翕然(
きゅうぜん)=突然、急に



三十頁後半
標註                                       類聚方

稠涎膠痰血糸腐臭、蒸熱口燥等の症有る者は、五方の得治する所に非ずなり。
酔状の如く、因って復陰股に下流す。小便難く、時に復冒する者は、茯苓桂枝五味甘草湯を与う。其の気の衝すを治す。

苓甘五味姜辛湯
桂枝五味甘草湯證にして、而して上衝せず、痰飲満する者を治す。

茯苓 四両 六分 甘草 乾姜 細辛 各三両 四分五厘 五味子 半升 七分五厘
右五味、水八升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、半升を温服す。桂枝五味甘草湯の如く煮る。日に三服す。
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三十頁後半解説
標註                                            類聚方

稠涎(ちょうえん)=濃いよだれ
膠痰(きょうたん)=粘い痰
血糸腐臭=血の混じる臭い痰
冒(ぼう)す=頭にものをかぶったような、頭がふさがれたような

三十一頁前半

標註                                       類聚方

衝気即ち低く、反って更にガイし胸満する者、苓桂五味甘草湯を用うに、桂を去り乾姜細辛を加え、以って其のガイ満を治す。

苓甘姜味辛夏湯
苓甘五味姜辛湯證にして、嘔する者を治す。
茯苓 四両 
六分 甘草 細辛 乾姜 各二両 三分 五味子 半升
七分五厘 半夏 半升 九分
右六味、水八升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、半升を温服す。煮ること苓桂五味甘草湯の如し。日に三服す。

三十一頁前半解説

標註                                            類聚方


三十一頁後半

標註                                       類聚方







痰飲家にて、平日咳嗽に苦しむ者は、此の方の半夏に代えて括ロウ実を以って、白密にて膏と為し用うれば、甚だ効有り。
ガイ満即ち止み、更に復渇す。衝気復発する者は、「細辛乾姜の熱薬と為すを以ってなり。」之を服せば当に遂に渇すべし。而して渇の反って止むは、「支飲と為すなり。支飲は、」法当に冒すべし。冒する者は必ず嘔す。嘔する者は復半夏を内れ、以って其の水を去る。

苓甘姜味辛夏仁湯
苓甘姜味辛夏湯證にして、微しく腫れる者を治す。
茯苓 四両 
四分 甘草 乾姜 細辛 各三両 三分 五味子 半升 五分 半夏 杏仁 各半升 六分

三十一頁後半解説

標註                                            類聚方

ロウ(楼)実=トウカラスウリ、又はキカラスウリの実

三十二頁前半

標註                                       類聚方

右七味、水一斗を以って、煮て三升を取り、滓を去り、半升を温服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。
水去り嘔止み、其の人形腫れる者は、加杏仁之を主る。「其の證は、麻黄を内(い)ずるに応ず。其の人遂に痺れるを以って、故に之を内れず。若し逆して之を内れれば、必ず厥す。然る所以は、其の人血虚にて、麻黄は其の陽を発すを以っての故なり。」

苓甘姜味辛夏仁黄湯
苓甘姜味辛夏仁湯證にして、而して腹中微結する者を治す。

三十二頁前半解説

標註                                            類聚方


三十二頁後半

標註                                       類聚方

茯苓 四両 四分 甘草 乾姜 細辛 大黄 各三両 三分 五味子 半升 五分 半夏 杏仁 各半升 六分 
右八味、水一斗を以って、煮て三升を取り、滓を去り、半升を温服す。
水二合を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。
若し面熱し酔えるが如く、「此れは胃熱上衝し其の面を薫ずと為す。」加大黄を以って之を利す。
為則按ずるに、以上五方、当に驚悸し、肉ジュン(潤)筋タ等の證有るべし。

三十二頁後半解説

標註                                            類聚方

ジュン(潤)筋タ筋肉が小刻みに痙攣すること


ロウ


トウカラスウリ(日本ではキカラスウリで代用)の実を乾燥したもの

ロウ実はウリ科のキカラスウリの実を使います。実にはデンプンや脂肪酸(リノール酸・リノレイン酸など)が多く含まれ潤肺・化痰・通便・排膿の効能があります。類聚方広義標註では苓甘姜味辛夏仁湯の半夏の変わりに括楼実を入れて煎じ、密を入れて膏薬にし、痰が多くて慢性的に咳がある患者に用うとよく効く!と書いてあります。咳き込む時に膏薬を咽に当てるようにしながら少しずつ飲み込むのでしょう。
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