類聚方広義・第二木曜会  2009・3・12

●3月12日は二十五頁前半の人参湯から読みました。

人参湯・茯苓杏仁甘草湯

 二十五頁前半
標註                                       類聚方

草其の急を緩める。一味の加損も得られず。古方の簡約、其の妙なるや此の如し。

産後続いて下利を得て、乾嘔して食せず、心下痞硬して、腹痛し、小便不利の者。諸病久しく癒えず、心下痞硬、乾嘔して食せず、時時腹痛し、大便濡瀉、微かに腫れる等の症見ゆる者。老人寒暑の候毎に、下利、腹中冷痛、歴歴と声有り。小便不禁、心下否硬、乾嘔する者、倶に難治と為す。此の方に宜し。若し悪寒し、或いは四肢冷の者は、附子を加う。
人参湯 理中丸也
心下否硬し、小便不利。或いは急痛す。或いは胸中痺の者を治す。

人参 甘草 朮 乾姜 各三両 七分五厘
右四味、搗きて篩い末と為し、蜜に和して、丸めること鶏黄大の如くす。沸湯数合を以って、一丸を和し、研砕してこれを温服す。日に三服し、夜に二服す。腹中未だ熱せざれば、益すに三四丸に至る。然れども湯に及ばず。湯法は、四物を以ち両数に依り切る。水八升を用いて、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。
水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。
日に三服す。加減法は、
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二十五頁前半解説
標註                                            類聚方
@産後の下利で食欲の無い者
A病後に食欲が無く下痢気味の者
B老人で季節の変わり目に下痢する者
Cいずれの場合も手足が冷える者は附子を加える


歴歴=グルグルと音がする形容の詞
鶏黄大とは卵の黄みの大きさ

 二十五頁後半
標註                                       類聚方

加減法は、後人の入なり。説は小青龍湯標に詳し。




傷寒、湯薬を服し云々、説を赤石脂禹餘糧湯標に見る。
○霍乱云々、玉函、千金翼に、理中湯之を主るに作る。
○揚雄の方言に云う。了は、快なり。了了不らずとは、
若し臍上築なる者は、腎気の動なり。朮を去り桂四両を加う。吐の多き者は、朮を去り生姜三両を加う。下るの多き者は、還って朮を用う。悸する者は、茯苓二両を加う。渇して水を飲まんと欲す者は、朮を加うに前に足し四両半と成す。腹中痛む者は、人参を加え前に足すに四両半と成す。寒する者は、乾姜を加え前に足すに四両半と成す。腹満の者は、朮を去り附子一枚を加う。湯を服した後、食頃の如く、熱き粥一升許りを飲めば、微しく自ずから温む。衣被を発掲す勿れ。

「傷寒、」湯薬を服すに、下利止まず。心下否硬し、瀉心湯を
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二十五頁後半解説
標註                                            類聚方
赤石脂=含水ケイ酸アルミニウム(カオリサイト)止瀉・止血作用
禹餘糧=加水ハロサイトや褐鉄鉱等の化合物・止瀉・止血作用
霍乱=急性吐瀉病
揚雄=漢代の方言を記録した人



二十六頁前半
標註                                       類聚方

猶快然たらざるを言うがごとし。寒は、水飲なり。
○胸痺云々、枳実薤白桂枝湯之を主る。人参湯も亦之を主る。金匱要略、聞くに間(々)此の例有り。是れ後人の竄入なり。夫れ仲景の方為るや、僅か一味の去加、一品の増減に、各其の義有りて存せざるなし。況や其の方已に異なるに、其の主治する所豈別つ無きや。按ずるに、此の條は枳実薤白桂枝湯の正症なり。若し人参湯症にて胸痺する者は、人参湯を与うべし。方極を以って見るべけんや。又按ずるに、外臺胸痺門、理中湯と、本草綱目、人参部附方に、併せ此の條を引いて、逆槍心を、逆
服し已わり、復他薬を以って之を下し、利止まず、医「理中」を以って之に与う。利益すに甚だし。「理中は中焦を理める。此の利は下焦に在り。」赤石脂禹餘糧湯之を主る。復利止まざる者は、当に其の小便を利すべし。
○「霍乱、」頭痛発熱し、身疼痛し、熱多く水を飲まんと欲す者は、五苓散之を主る。寒多く水を用いざる者は、「理中」丸之を主る。
○「大病差えた後、」喜唾、久しく了了たらざる者、「胃上に寒有り、当に丸薬を以って之を温めるべし。」
○「胸痺、」心中痞、留気結んで胸に在り。胸満し、脇下にて心を逆槍す、枳実薤白桂枝

二十六頁前半解説
標註                                            類聚方

薤白=らっきょう



二十六頁後半
標註                                       類聚方

気槍心に作る。
○痺は、閉塞して痛むを謂うなり。胸痺は、胸中痺塞して痛むこと、是なり。

按ずるに、胸痺胸中気塞、短気し、心下悸し、而して喘する者、茯苓杏仁甘草湯之を主る。胸痺、胸中痞満し、嘔エツする者、橘皮枳実生姜湯之を主る。此の條は本(もと)胸痺の軽症なり。茯苓杏仁甘草湯に宜し。其の義詳しく拙著の重校薬徴に弁ず。又按ずるに、千金、外臺、橘枳姜湯之を主るの七字無し。是なり。
○短気は、気急して息迫なり。
○嬰児、喘咳して乳食を吐し、虚里跳動、小便
湯之を主る。人参湯も亦之を主る。



茯苓杏仁甘草湯
悸して胸中痺する者を治す。
茯苓 三両 
一銭五分 杏仁 五十個 一銭 甘草 一両 五分
右三味、水一斗を以って、煮て五升を取り、一升を温服す。

水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。
日に三服す。差ずんば再び服す。
「胸痺、」胸中気塞し、短気す。茯苓杏仁甘草湯之を主る。橘枳姜湯も亦之を主る。
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二十六頁後半解説
標註                                            類聚方

嬰児=生後一歳未満の乳幼児 茯苓=マツの根に寄生するマツホドの菌核
杏仁=アンズの種子胚

不利、腹に他異無き者、此の方に半夏を加えば効く。

孫思バク曰く、弾丸は十梧桐子を以って、之に準ず。
此の方の煎法は明らかならず。故に東洞先生他の例を視て、以って之を裁定す。按ずるに、程本に、水五升を以って、煮て三升を取り、分温三服すに作る。金鑑も同じ。又按ずるに、戎塩一枚は、疑うに二枚の誤りなり。余は常に二枚を用う。故に今二枚に準じ分量に注す。

茯苓戎塩湯
心下悸し、小便不利する者を治す。
茯苓半斤 二銭 朮二両 五分 戎塩 弾丸大 一枚 六分
右三味、先ず茯苓朮を奨め、煎じを成し、塩を入れ再煎し、分温三服す。
水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。滓を去り、塩を入れ、消せしめ服す。
小便不利、蒲灰散之を主る。滑石白魚散、茯苓戎塩湯併せ之を主る。
為則按ずるに、当に心下悸する證有るべし。又按ずるに、此の方の煎法

茯苓
マツの根に寄生するサルノコシカケ科・マツホド(茯苓)の菌核。採集直後の茯苓の内部は乳白色で柔らかく乳液を含んでいます。地下数十センチに隠れていますので鉄の棒で地下を探り先端に乳液が付いた場所を掘って採集します。最近は中国や北朝鮮で栽培された茯苓が輸入されます。効能は利尿・抗下痢・抗腫瘍・血糖降下・鎮静・免疫力強化作用などが確認されています。

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