類聚方広義・第二木曜会  2009・2・12

●2月12日は二十三頁後半の桂枝甘草湯から、二十五頁前半の桂枝人参湯まで読みました。

桂枝甘草湯より

 二十三頁後半
標註                                       類聚方







両手を相し叉すを曰う。冒は、覆うなり。心下悸して、而も上衝急迫し、手を以って親しく心胸を覆圧し、稍(やや)安きを覚うが、故に又(また)人をして之を按ずるを得んと欲すなり。然れども諸を桂枝加桂湯に比ぶれば、衝逆は猶(なお)軽き者なり。
之を得て入るを以ってす。」


桂枝甘草湯
上衝急迫の者を治す。

桂枝 四両 二銭 甘草 一両 一銭
右二味、水三升を以って、煮て一升を取る。滓を去り、頓服す。水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
発汗過多、其の人
手し、自ずから心を冒す。心下悸し、按ずるを得んと欲する者は、
為則按ずるに、当に急迫の證有るべし。
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二十三頁後半解説
標註                                            類聚方
(さく)交わる。
親しく=自(みずか)ら、と同じ。
(しょ)=之於(しお)=之を、と読む。
(さ)=手を重ねる。



二十四頁前半
標註                                       類聚方

喉痺、腫れ痛み、声音出でず、頭項強痛し、悪風寒の者は、此の方に桔梗大黄を加え、煎じ服して快利を取る。兼ねるに冰硼散を吹く。若し腫れ甚だしく、湯薬下らざる者、悪血を刺去すれば、則ち咽中頓にを得る。而して後に湯薬を与うべし。
纏喉風、痰湧痛楚、咽喉閉塞する者は、先ず丹礬枯礬の二味を咽中に吹き、頑痰を誘吐して、而して後に此の方を与うべし。





此の方は当に人参湯の下に在るべし。桂枝を以って主薬と為すを以ってす。故に・・
半夏散及湯
咽喉痛み、上衝急迫する者を治す。
半夏 桂枝 甘草 各等分
右三味、各別にき篩い已わり、之を合治して、白飲に和し、方寸ヒ服す。日に三服す。若し散服能わざる者は、水一升を以って、煎じ七沸し、散を両方寸ヒ内れ、更に煮ること三沸し、火より下ろし小し冷ましめ、少少之をめ。
水一合を以って、空煮して七沸し、薬末二銭を内れ、三沸し小冷せしめ、少少之を嚥む。
「少陰病、」咽中痛む者。

桂枝人参湯
人参湯證にして、而して上衝急迫激しき(者)を治す。

二十四頁前半解説
標註                                            類聚方

冰硼散(ひょうほうさん)=竜脳(冰片)+硼砂(ホウ酸塩鉱物)+朱砂(天然水銀)+玄明粉(芒硝)で外科正宗・医宗金鑑に名前が出てきます。喉の腫れや痛み、痒みに使います。
(しょう・す)しまりがない状態。
丹礬=硫酸銅

枯礬=
焼き明礬(みょうばん)=硫酸カリウムや硫酸アルミニウムの混合物=湯の華。
白飲=おもゆ、ご飯のおねば、
方寸ヒ
=一辺が一寸の正方形板の匙。
嚥=飲みくだす。



二十四頁後半
標註                                       類聚方

・・桂枝剤の次に列するなり。説は東洞先生の方極或問中に見ゆ。
○頭痛発熱、汗出で悪風、支体倦怠、心下支、水瀉するに傾くが如き者、春秋の間に、多く之有り。此の方に宜し。按ずるに、人参湯は吐利を主どり、此の方は、下痢にて表症の有る者を主どる。
○協は、挟と同じ。玉函、脈経、千金翼、皆挟に作る。宋板は協に作る。挟熱下利、此れは表熱未だ除かず、而して数(しばしば)之を下すを以っての、故に素(もと)有りし裏寒、表熱を挟み、而して下利止まざるなり。主どるに桂枝人参湯を以ってす。桂枝を以って表を解し、朮、乾姜にて、寒飲をノゾく。下利止み、人参は心下痞硬を解し、甘
者。

桂枝 甘草 各四両 八分 朮 人参 乾姜 各三両 六分
右五味、水九升を以って、先ず四味を煮て、五升を取り、桂を内れ、更に煮て三升を取る。一升を温服す。
水一合八勺を以って、煮て六勺を取る。
日に再び、夜一服す。
「太陽病、外證未だ除かず、而して数(しばしば)之を下し遂に協熱して利す。」利下止まず、心下否硬す。「表裏解せざる者。」
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二十四頁後半解説
標註                                            類聚方


 二十五頁前半
標註                                       類聚方

草其の急を緩める。一味の加損も得られず。古方の簡約、其の妙なるや此の如し。

産後続いて下利を得て、乾嘔して食せず、心下痞硬して、腹痛し、小便不利の者。諸病久しく癒えず、心下痞硬、乾嘔して食せず、時時腹痛し、大便濡瀉、微かに腫れる等の症見ゆる者。老人寒暑の候毎に、下利、腹中冷痛、歴歴と声有り。小便不禁、心下否硬、乾嘔する者、倶に難治と為す。此の方に宜し。若し悪寒し、或いは四肢冷の者は、附子を加う。
人参湯 理中丸也
心下否硬し、小便不利。或いは急痛す。或いは胸中痺の者を治す。

人参 甘草 朮 乾姜 各三両 七分五厘
右四味、搗きて篩い末と為し、蜜に和して、丸めること鶏黄大の如くす。沸湯数合を以って、一丸を和し、研砕してこれを温服す。日に三服し、夜に二服す。腹中未だ熱せざれば、益すに三四丸に至る。然れども湯に及ばず。湯法は、四物を以ち両数に依り切る。水八升を用いて、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。
水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。
日に三服す。加減法は、
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二十五頁前半解説
標註                                            類聚方

●桂枝甘草湯は現在の心筋梗塞や狭心症の症状を指すのではないかとも言われます。吉本の経験ですが約30年位前に胸を押さえるようにして来院した男子(28歳くらい)に桂枝甘草湯を煎じて頓服させよくなった例があります。後は桂枝甘草竜骨牡蠣湯を一週間服用してもらい平常どうりになりました。
胸が苦しくて心臓の上辺りを両手で抑えないと不安だと言っていましたので狭心症や心筋梗塞とは違っていたのかもしれません。
●半夏散及湯と同じ使い方をする処方に半夏苦酒湯があります。類聚方広義では百十八頁に解説しています。半夏の粉末は直接粘膜に触れますと蓚酸カルシウムが刺激となって腫れたり痛むことがあります。半夏苦酒湯は半夏を黄みだけを抜いた卵の殻に入れ、苦酒を入れて煎じるという処方ですが実際には卵の殻が火力で割れてしまいます。簡便法として卵の殻と半夏を陶磁器に内れ、苦酒(酢)と共に煎じるようにと尾台先生は標註で述べています。卵の白味には塩化リゾチームが含まれていますので炎症を鎮めてくれます。酢(酢酸)は半夏の蓚酸カルシュム結晶を溶解します。同じように用いる処方に駆風解毒湯があります。大塚敬節先生は慢性的に扁桃腺炎を繰り返す人に用いると言っています。駆風解毒湯は家族に用いたのが初めてだった!と聞きました。急性の場合は葛根湯を使うと聞きました。

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