類聚方広義・第二木曜会  2009・11・12


麻黄湯

四十頁前半

標註                                       類聚方



千金方に云う。卒忤、鬼撃、飛尸、諸奄忽気絶、復覚無く、或いは已に脈無きを主る。口禁じて拗(ねじ)れ開かずば、歯を去って湯を下す。湯入れるに口より下らざる者は、病人の髪を分け、左右の足にて肩を踏み、之を引く。薬下り、復増して一升を取れば、須臾にて立ちどころに甦る。按ずるに此れを卒忤、鬼撃、飛尸、と称すると雖も、但是は邪気の驟閉にして、卒然に昏冒する者、走馬、備急、裏実便閉、腹満し暴痛の激しき症と、同じからず。宜しく弁別すべし。○卒中風、痰涎壅盛し、人事を省みず、心下堅く、身に大いに熱し、脈浮大の者は、白散、
為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。

麻黄湯
喘して汗無く、頭痛し、発熱し、悪寒し、身体疼痛する者を治す。
麻黄 三両 杏仁 七十個 
各九分 桂枝 二両 六分 甘草 一両 三分
右四味、水九升を以って、先ず麻黄を煮て二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て二升半を取る。滓を去り、八合を温服す。水二合を以って六勺を取る。覆って微似汗を取り、粥を啜るを須(もち)いず。餘は桂枝

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四十頁前半解説
標註                                            類聚方
卒忤(そつご)=急に乱れる
鬼撃(きげき)=カマイタチに襲われたように
飛尸(ひし)=急に倒れる、尸=屍=しかばね
奄忽(えんこつ)=にわかに卒倒
驟閉(しゅうへい)=閉じこもる
走馬=病気の種類!(※走馬疳=「歯齦の腐乱」を起こす病気で、壊血病などを指す)
備急=同じく病気の一種!
卒中風=急にくる半身不随
痰涎壅盛(たんえんようせい)=痰やよだれが気管をふさぐ
上沫=麻黄を煎じるとアクが浮いてくる

四十頁後半

標註                                       類聚方
或いは瓜蔕散を以って、吐下を取った後、此の方を用うべき者有り。宜しく参考すべし。
此の章は、麻黄湯の正症なり。
脈浮にして胸満脇痛する者は、外症未だ解せざるなり。故に正症に非ずと雖も、亦麻黄湯を与うなり。然れども現在の症を論ずる者に非ず。故に設しと云うなり。設しは虚假の辭。
○張の本に、麻黄湯之を主るの五字、此れ当に其の汗を発すべしの下に在り。是とす。按ずるに、桂枝湯の方後に曰く、服し已わり須臾にて云云は、此の條の服薬已わりと、語意正に相同じ。然れども則ち此の條の微除も、亦当に須臾に作るべし。葢し音の近きに因るの誤りなり。
初生児、時時発熱、鼻
法の如く消息す。
「太陽病、」頭痛発熱、身疼腰痛、骨節疼痛、悪風、汗無く而して喘する者、○「太陽陽明との合病、」喘而して胸満する者は、下すべからず、「太陽病、十日以(より)去り(このかた)、」脈浮細而して臥すを嗜む者は、「外已に解するなり、」設し胸満胸痛の者は、小柴胡湯を与う。脈但浮の者は、麻黄湯を与う。○「太陽病、」脈浮緊、汗無く発熱し、八九日解せず。「表證仍ほ在るは、此れ当に其の汗を発すべし、」服し已われば微しく除く、其の人発

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四十頁後半解説
標註                                            類聚方
瓜蔕=マクワウリの原種でヘタが苦く服用すると吐く
虚假=実体の無い仮の

 四十一頁前半
標註                                       類聚方

塞がり通ぜず、哺乳能わざる者有り。此の方を用うれば、即愈ゆ。
○痘瘡、見點の期に、身熱ヤクが如く、表鬱し発し難く、及び大熱煩躁して喘し、起脹せざる者を治す。
○麻疹、脈浮数、発熱身疼し、腰痛、喘咳、表壅がりて出齊わざる者を治す。
○哮喘、痰潮し声音出でず、擡肩滾吐、臥すを得ず、悪寒発熱し、冷や汗油の如き者を治す。生姜半夏湯を合して、之に用いば立ちどころに効く。
○按ずるに、哮喘の症、大抵一年に一二発、或いは五六発、又は毎月一二発の者有り。其の発必ず外感、過食に因る。外感より来る者は、麻黄湯、麻杏甘石湯、大
煩目瞑し、激しき者は必ず衄す。衄すれば及ち解す。「然る所以の者は、陽気の重なるが故なり。」○脈浮の者、病表に在り。汗を発すべし。○「脈浮而して数の者は、発汗すべし。」○「傷寒脈浮緊、汗を発せず。因るに衄を致す者は、」○「陽明中風、脈弦浮大、而して短気し腹都て満し、脇下及び心痛む。又之をアンずるに、気通ぜず、鼻乾き汗を得ず、臥を嗜み、一身及び面目悉く黄、小便難く、潮熱有りて、時時エツし、耳の前後腫れ、之に刺すに少し差(癒)える。外解せず、十日過ぎ、脈続いて浮の者は、小柴胡湯を与う。脈但浮にて
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四十一頁前半解説
標註                                            類聚方
痘瘡=天然痘・ほうそう
麻疹=はしか
出齊(でそろ・う)=斑点が出来る
痰潮=痰が湧き出る
擡肩(だいけん)=肩をもたげ
滾吐(こんと)=たぎるように吐く
哮喘=ほえるように咳き込む
目瞑=めまい
衄=鼻血

耳の前後=足の少陽胆経に沿って

 四十一頁後半
標註                                       類聚方

青龍湯等に宜し。飲食或いは大便不利に因って発する者は、先ず陥胸丸、紫円等を以って、宿滞を疏蕩し、後に對症方を用いるを、佳と為す。



麻黄湯症、一身浮腫し、小便不利の者を治す。症に随い附子を加う。
○婦人稟性薄弱にて、妊娠毎に、水腫し堕胎の者、其の人に越婢加朮附湯、木防己湯等を用うれば、則ち直に堕胎する者有り。此の方に宜し。又葵子茯苓散を合するも、亦良し。
○山に行き瘴霧を冒い、或いは窟穴井中に入り、或いは麹室混堂諸湿気熱気、鬱
餘證無き者は、麻黄湯を与う。若し尿せず、腹満してエツを加う者は、治せず。」○「陽明病、脈浮、」汗無くして喘す者は、発汗すれば則ち癒ゆ。


麻黄加朮湯
麻黄湯證にして、而して小便不利の者を治す。
麻黄湯方内に於いて、朮四両を加う。
麻黄 杏仁 各七分五厘 桂枝 五分 甘草 二分五厘 朮 一銭
右五味、煮ること麻黄湯の如し。
「湿家。」身煩疼す、麻黄加朮湯を与うべし。其の汗を発すを宜しと為す。火を以って之を攻むべからず。
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四十一頁後半解説
標註                                            類聚方
疏蕩=流し去る

痙攣発作により呼吸できなくなった者への麻黄湯類(還魂湯)の投与方法

(四十頁前半・標註参照↑ ※金匱要略では卒死を治す項に還魂湯の條文下に千金方を引用して説明をしている!)
◎ 歯を去って湯を下す。湯入れるに口より下らざる者は、病人の髪を分け、左右の足にて肩を踏み、之を引く。薬下り、復増して一升を取れば、須臾にて立ちどころに甦る。

なんとまあ!荒治療だったんですね!
麻黄
○マオウ科の常緑小低木、マオウの全草(地上部)を用いる。主成分はエフェドリン。
中枢神経興奮作用、発汗作用、鎮咳作用、利尿作用・抗アレルギー作用があり頭痛・発熱・鼻閉・喘息・麻痺等の症状を改善します。

麻黄

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