類聚方広義・第二木曜会  2009・10・8


牡蠣沢瀉散・八味丸

三十八頁前半

後世の虚腫と称する者に、此の方に宜しき者有り。宜しく其の症を審らかにし以って之を与うべし。若し散服能わざる者は、湯と為し用うも可なり。 牡蠣沢瀉散
身体腫れ、腹中に動有り、渇して而して小便不利する者を治す。
牡蠣 沢瀉 括ロウ根 蜀漆 テイレキ子 商陸根 海藻 各等分
右七味、異なり(搗)き下ろし篩いて、散と為し、更に臼中に入れ之を合す。白飲に和し、方寸匕を服す。
白湯を以って一銭を服す。小便利すれば、後服を止む。日に三服す。
「大病差(癒)えて後、」腰従り以下に、「水気」有る者、

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三十八頁前半解説
標註                                            類聚方
後世=古方に対する流派か?俗世か? ロウ根=キカラスウリの根
蜀漆=ジョウザンアジサイ(常山)、又は蜀国の漆の説
テイレキ子=イヌナズナ・グンバイナズナ等の実
商陸=ヤマゴボウの根
海藻=ホンダワラの説

三十八頁後半

標註                                       類聚方


此れ脚気上入し、小腹不仁を云う者は、其の初め脚部麻痺し、或いは萎弱し微腫し、小便不利等の症より、遂に小腹不仁を作す者にして、本より険症に非ず。故に治も亦難しからざるなり。若し腹中に毒充満し、覃して四支に及び、遂には水気をあらわす(見わす)者に至れば、小腹不仁、小便不利等の症有ると雖も、此の方の能く功を立つる所に非ざるなり。急いで大承気湯与え、以って之を下すべし。若し疑殆決せず、姑息の治を為せば、則ち短気煩躁し衝心して而して死す。世間に多く脚気を以って
為則按ずるに、当に胸腹に動有り。或いは渇の證有るべし。

八味丸
臍下不仁し、小便不利する者を治す。
乾地黄 八両 
十六銭 山茱萸 薯蕷 各四両 八銭 沢瀉 茯苓 牡丹皮 各三両 六銭 桂枝 附子 各一両 四銭
右八味、之を末とし、煉蜜して和し、梧子大に丸め、酒にて十五丸を下す。 
清酒を以って一銭を服す。 日に再服す。
「脚気」上入し、小腹不仁に、
○「虚労、」腰痛し、小腹拘急し、

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三十八頁後半解説
標註                                            類聚方
覃=腫れる
四支=四肢
疑殆決せず=どちらとも決めかねていると
姑息=一時しのぎ
乾地黄=生干しの地黄
薯蕷=ヤマイモの根
梧子=梧桐子のことでアオギリの実

 三十九頁前半
標註                                       類聚方

死ぬは、皆医人の投機の術、果決の断の無きを以ってなり。大承気湯標に詳し。
産後の水腫にて、脚気冷痛し、小腹不仁し、小便不利の者を治す。水煮して服す。
淋家にして、小便するに昼夜数十行、便了(お)わり微しく痛む。居常便心断たれず。或いは厠に上らんと欲すれども已に遺す。咽乾口渇する者を、気淋と称す。老夫婦人に斯の症多く、此の方に宜し。又陰痿、及び白濁の症、小腹不仁にて力無く、腰脚酸軟し、或いは痺痛し、小便頻数する者を治す。婦人の白沃甚だしい者も、亦此の方に宜し。
小便不利する者を、
○夫れ短気「微飲」有り、当に小腹より(従)之を去るべし。苓桂朮甘湯之を主る。「腎気」丸も亦之を主る。
○「男子」消渇し、小便反って多く、飲むに一斗を以って、小便一斗す、
○「問いて曰く、婦人病、飲食故の如く、煩熱して臥す能わず、而して反って倚息する者は、何ぞや。師曰く、此れを転胞と名づく。溺を得られざるなり。胞系了戻を以って、故に此の病に至る。但小便を利せば則ち愈ゆ。」
為則按ずるに、外臺秘要に、桂枝二両附子二両に作る。今之に従う。
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三十九頁前半解説
標註                                            類聚方
果決=思い切りのよい
淋家=小便の漏れる人
居常=普段生活する中で
遺す=漏らしてしまう
陰痿=インポテンス
白沃=おりもの
臥す=病気になる(起き上がれない)
転胞=小便の出ない病気
溺=尿をする・いばり
胞系了戻=子宮がねじれる

 三十九頁後半
標註                                       類聚方





孫思バク曰く、梧桐子大の如きは、二大豆を以って之に準ず。



水気有るは、腹中に水気有るを謂うなり。
括ロウ瞿麦丸
心下悸し、小便不利、悪寒して渇する者を治す。

括ロウ根 二両 四銭 茯苓 薯蕷 各三両 六銭 附子 一枚 瞿麦 一両 各二銭
右五味、之を末とし、煉蜜して梧子大に丸め、三丸を飲服す。日に三服す。知らずんば、増して七八丸二至る。白湯を以って一銭を服す。小便を利し、腹中温むるを以って、知ると為す。
小便不利する者は、「水気」有り、其の人若しくは渇し、

為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。
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三十九頁後半解説
標註                                            類聚方
梧桐子=アオギリの実 瞿麦=カワラナデシコ(瞿麦子=種子)

 四十頁前半




千金方に云う。卒忤、鬼撃、飛尸、諸奄忽気絶、復覚無く、或いは已に脈無きを主る。口禁じて拗(ねじ)れ開かずば、歯を去って湯を下す。湯入れるに口より下らざる者は、病人の髪を分け、左右の足にて肩を踏み、之を引く。薬下り、復増して一升を取れば、須臾にて立ちどころに甦る。按ずるに此れを卒忤、鬼撃、飛尸、と称すると雖も、但是は邪気の驟閉にして、卒然に昏冒する者、走馬、備急、裏実便閉、腹満し暴痛の激しき症と、同じからず。宜しく弁別すべし。○卒中風、痰涎壅盛し、人事を省みず、心下堅く、身に大いに熱し、脈浮大の者は、白散

為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。


麻黄湯
喘して汗無く、頭痛し、発熱し、悪寒し、身体疼痛する者を治す。
麻黄 三両 杏仁 七十個 各九分 桂枝 二両 六分 甘草 一両 三分
右四味、水九升を以って、先ず麻黄を煮て二升を減じ、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て二升半を取る。滓を去り、八合を温服す。水二合を以って六勺を取る。覆って微似汗を取り、粥を啜るを須(もち)いず。餘は桂枝

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四十頁前半解説
標註                                            類聚方

商陸根

ヤマゴボウ科 ヤマゴボウの根(宿根)

根に硝酸カリウムを含み利尿作用がありますが有毒成分のフィトラッカトキシンを含みますので多量に摂取しますと嘔吐・下痢・呼吸困難・全身痙攣・死亡に至る副作用があります。


地黄

ゴマノハグサ科 アカヤジオウ・カイケイジオウの根

イリドイド配糖体・糖類・アミノ酸・カロチノイド・ビタミンAなど多くの成分が含まれ貧血や体力増進、血糖降下作用、利尿作用、滋潤効果などが知られています。


山薬

ヤマノイモ科 ヤマノイモ・ナガイモなどの根茎

薯蕷とはナガイモのことですが薬用にはナガイモを含むイチョウイモやツクネイモなどの栽培品が用いられます。糖類やアミノ酸・グルコサミンが含まれ胃腸を丈夫にして肺や腎臓の機能を高めると言われています。糖尿病治療・胃腸改善など、滋養作用があるので老化防止に用いられます。


山茱萸

ミズキ科 サンシュユの果肉

イリドイド配糖体が含まれ糖尿病の改善や免疫を強化する作用があります。酸味が強く収斂的に作用して頻尿、夜尿などの尿漏れに使われてきました。その他、発育障害、老化、腰痛、倦怠感、精力低下、耳鳴りなどの改善に用いられてきました。


牡丹皮

ボタン科 ボタンの根皮

ペオノールの白い結晶体が表面に見えます。抗炎症作用、抗アレルギー作用、血小板凝集抑制作用などが知られています。漢方では血行をよくすることで鬱血を散らす効果があり、生理不順や子宮筋腫など婦人病に多く見られる症状に用いられてきました。


附子

キンポウゲ科 トリカブトの根茎や子根

毒性が強く減毒をしないで摂取するとアコニチンなどのアルカロイド作用で知覚麻痺や呼吸麻痺が起こり心臓運動の停止に至って死亡します。減毒処理をして少量使うと身体を温め、痛みを取り、機能の衰えた身体を賦活させる効果があります。


ホウブシ

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