類聚方広義・第二木曜会  2008・9・11

●9月11日は十三頁後半の桂枝附子去桂枝加朮湯から、十六頁前半の桂枝去桂加茯苓朮湯まで読みました。

桂枝附子去桂枝加朮湯より
十三頁後半
標註                                       類聚方




此の方、脈経、玉函、千金翼、皆朮附子湯と名づく。古義を失わざるに似たり。金匱に白朮附子湯と名づく。外臺に附子白朮湯と名づく。而して金匱は其の量を半折す。倶に古に非ずなり。朮の蒼白を分かつは、陶弘景以後の説のみ。
按ずるに、金匱白朮附子湯、其の量を桂枝附子湯に半折す。而して
薬加附子湯と同じ、而して治は方名と異なる。彼方の下に曰く。微悪寒と。此の方の下に曰く。身体疼煩と、悪寒軽く、疼煩重し。独り附子の多少に在るのみ。

桂枝附子去桂枝加朮湯
桂枝附子湯證にして、而して大便硬く、小便自ら利し、上衝せざる者を治す。
桂枝附子湯方内に於いて、桂枝を去り、朮四両を加う。
朮 
八分 附子 六分 甘草 四分 大棗 生姜 各六分
右五味、水三升を以って、煮て一升を取り、滓を去って、分かち温め三
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十三頁後半解説

標註                                       類聚方
陶弘景は南北朝時代(西暦500年くらい)に神農本草経を編纂し白朮と蒼朮を区別した。その前の時代は朮を蒼・白に分けなかった。金匱要略の文章の一部は後に伝写され加筆されたものだろうという意味。
金匱要略の白朮附子湯の分量が桂枝附子湯の半分というのも不自然。



十四頁前半
標註                                          類聚方
朮二両を加う。故に水三升を以って煮て一升を取るなり。今桂枝附子湯の全方中に、朮四両を加う。則ち煎法は当に水六升を以って煮て二升を取るべし。此れ中村子享(しこう)校讎の粗なり。

小便自利とは、猶(なお)不禁と曰うがごとし。朮附子茯苓、皆小便不利自利を治す。猶(なお)桂麻の無汗自汗を治すがごとし。

此の方、千金脚気門に、四物附子湯と名づく。方後二曰く、体腫れる
服す。煮ること桂枝附子湯の如くす。一服にて身に痺れを覚う。半日許りに再服す。三服を都(ことごと)く盡(つ)くし、其の人冒状の如くを、怪しむ勿れ。即ち是れ朮附の並走して皮中を走り、水気を逐(お)うに、除くを得られざるの故なるのみ。
「傷寒八九日、風湿相摶、」身体疼煩し、自ずから転側する能わず、嘔せず渇せず、「脈浮虚にしての者、」桂枝附子湯之を主る。若し其の人大便硬く、小便自利する者は、
 為則按ずるに、桂枝附子湯證にして、而して衝逆無き者なり。

甘草附子湯
骨節煩疼し、屈伸を得られず、上衝
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十四頁前半解説

標註                                            類聚方
中村子享は吉益東洞の弟子で中西深斎と同輩とされていますが詳細は不明。
「校讎=こうしゅう」とは校正=校刊すること。
「風湿相摶」の部分で、「」はタン・ダン・まる、いと言う意味。「」はハク・う、つと言う意味。
「渋」は1008年初刊の広韻(字引)によると「不滑也=なめらかでない」とある。



十四頁後半
標註                                            類聚方
者は、防己四両を加え、悸気し小便不利には、茯苓三両を加う。玉函は、甘草朮各三両に作る。今之に従う。
風毒、痛風等を治す。而して其の所之(ゆえ)は、桂枝附子湯と、略似て而して激しき者なり。学者宜しく親観自得すべし。症に随ってズイ賓丸、七宝承気丸、再造散を兼用するを、佳と為す。
広韻に曰く、妙は、好なり。妙と為すは、猶(なお)好と為すを言うがごとし。按ずるに、徐彬(じょひん)の金匱論註、沈明宗(しんめいそう)編註、並んで佳と為すに作るは、義亦通ず。玉函に始めと為すに作るは、誤りや。○掣(せい、てつ)、正字通に云う。陳列の切、音は徹、牽曳(けんえい)なり。唐
して汗出で悪寒し、小便不利の者を治す。
甘草 朮 各二両 
七分五厘 附子 二枚 五分 桂枝 四両 一銭
右四味、水六升を以って、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。
水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。初め服して微しく汗を得れば則ち解す。能く食し汗出で、復煩する者は五合を服す。一升の多きを恐れる者は、六七合を服す。「妙と為す。」
「風湿相摶、」骨節煩疼し、掣痛し、屈伸を得られず。之に近づけば
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十四頁後半解説

標註                                            類聚方
「ズイ賓丸」とは別名を平水丸ともいい、商陸・甘遂・芒硝・芫花・呉茱ユで構成され浮腫のある脚気に用いられた。
「再造散」とはウコン・p角刺・白牽牛子・反鼻・大黄で構成され梅毒治療に兼用された。
「広韻」とは1008年初刊の国家字書。
「徐彬」は喩嘉言の弟子で1668年、傷寒尚論全書・金匱要略論註を著す。
「沈明宗」も人名。
「陳列の切」とは陳と列の発音において母音と子音を組み合わせの韻の発音を現すが詳しくは不明。

「妙と為す。」に関し標註にて色々と考証している。
「掣痛」はテツツウ又はセイツウと読み、引きつれて痛むこと。



十五頁前半
標註                                        類聚方
韻の、尺制の切と、義同じ。
桂枝去桂加茯苓朮湯の、去桂の二字は疑うべし。太陽篇、瓜蔕散の條に曰く。病桂枝症の如く、頭痛まず項強ばらず、是れ頭痛項強は、本桂枝湯症なり。今已に桂枝湯を用い或いは之を下すと雖も、仍ほ頭項強痛し、翁翁として発熱し止まずは、是れ桂枝湯症、依然として仍ほ在るなり。何ぞ桂枝を去るを得んや。況や主薬を去るの理無きおや。是(こ)の故に夫(かの)桂枝去芍薬加附子湯、桂枝去芍薬加p莢湯、桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣湯、柴胡去半夏加括ロウ湯、木
則ち痛み劇しく、汗出で短気し、小便不利し、悪風して衣を去るを欲せず、或いは身微しく腫れる者は、
 為則按ずるに、当に衝逆の證有るべし。

桂枝去桂加茯苓朮湯
桂枝湯證にして、悸して小便不利し、上衝せざる者を治す。
桂枝湯方内に於いて、桂を去り茯苓朮を各三両加う。余は前法に依り煎服す。小便利すれば則ち癒ゆる。
 芍薬 大棗 生姜 茯苓 朮 
各六分 甘草 四分
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十五頁前半解説

標註                                            類聚方
 
「尺制の切」も「陳列の切」と同じということ。


十五頁後半
標註                                       類聚方
防己去石膏加茯苓芒硝湯の諸方の如く、其の去加する所は、皆臣佐の薬品に過ぎず。以って證(あか)しとすべしや。後に徐霊胎の説を読むに、亦余の意と合して符契の如し。益して見之を愆(あやま)らずを信ず。成無巳も亦曰く、頭項強痛、翁翁発熱、汗下を経ると雖も、邪気仍ほ表に在るなりや。心下満微痛し、小便自利するは、則ち結胸を成さんと欲す。今外症未だ罷(や)まず、汗無く小便不利せば、則ち心下満して微痛するを、停飲と為すなり。桂枝湯を与えて以って外を解すに、茯苓白朮を加え、以って小便を利し、留飲を行(めぐ)らすなり。是れに由り之を観れば、成氏の註する所の本、去桂の二 右六味、煮ること桂枝湯の如く。
桂枝湯を服し、或いは之を下し、仍(しきり)に頭項強痛し、翁翁と発熱し、汗無く心下満し微しく痛み、小便不利の者を、
 為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。

桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯
桂枝去芍薬湯、麻黄附子細辛湯、二方の證の相合する者を治す。
桂枝 生姜 各三両 大棗 十二枚 各六分 甘草

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十五頁後半解説
標註                                            類聚方
臣佐とは薬の種類に君・臣・佐・使薬があって臣と佐という意味。
徐霊胎は吉益東洞と同時代(明〜清の時代)に活躍した傷寒論を重要視した人、著書に「傷寒論類方」がある。
符契とは割符のことで二つがぴったり一致すること。
ヒとは自分のことをへりくだって表わす表現。



 十六頁前半
標註                                       類聚方

字無きや必せり。説は拙著の橘黄医談に詳らかなり。

気分医科十六字、此れは枳朮湯症なり。医宗金鑑に、以って衍文と為せるは、是なり。且つ気分の二字は、仲景の口気に似ざる。今傍例に據(よ)りて之を試すに、上衝頭痛、発熱喘咳、身体疼痛、悪寒甚だしき者、之を主る。子柄の気分血分の論は、含糊決せず、且つ薬徴の文義を解せずして、謾(あざむ)くに妄傅会の説と為して、無用の弁と謂うべしや。○老人秋冬の交毎に、痰飲咳嗽、胸背脇腹攣痛、悪寒する者有るに、此の方宜し。
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十六頁前半解説
標註                                            類聚方
「橘黄医談」は同名の著書(山本貞惇著)が有るので注意!


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