類聚方広義・第二木曜会 2008・5・8
●今日は類聚方広義七頁後半の括婁桂枝湯から、十頁前半の桂枝加芍薬生姜人参湯まで進みました。
括婁桂枝湯より
七頁後半
標註 類聚方
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程林本には、括婁根三両に作る。今之に従う。凡そ某書に幾両に作り、今之に従うと云うは、皆其の両数に従って、以って各薬の下に注す。但し本文は別に一にし旧貫に仍る。下は皆之に倣う。
○按ずるに、桂枝湯に云う、頭痛項強。桂枝加葛根湯、葛根湯は、倶に云う、項背儿儿。此の方に云う、身体強儿儿然、脈反って沈遅、脈沈遅にして而して猶発汗法を用いるは、是れ痙病と為す所以なり。又破傷風を治す。括婁桂枝湯
桂枝湯証にして渇する者を治す。
桂枝湯方内に於いて、括婁根二両を加う。
桂枝 芍薬 大棗 生姜 各六分 甘草 四分 括婁根 六分
右六味、水九升を以って、煮て三升を取る。分温三服す。
水一合八勺を煮て六勺を取る。
微汗を取り、汗出でざれば、食頃に熱き粥を啜り、之を発す。
七頁後半解説↓
標註 類聚方
程とは程応旄(ていおうぼう)のこと、林とは林億(りんおく)のこと。
旧貫とは古い本の傷寒論・金匱要略のこと。
食頃は食事をする時間のことで約30分くらい。
八頁前半
標註 類聚方
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葛根湯症と、略相同じ。当に脈の浮数と沈遅とを以って之を断ずべし。
千金、外臺、倶に黄耆五両に作る。今之に従う。太陽病、其の証備わり、身体強ばること儿儿然と、脈反って沈遅、此れを痙病と為す。
為則按ずるに、桂枝湯の証にして渇する者、之を主る。
桂枝加黄耆湯
桂枝湯證にして、黄汗し、或いは盗汗の者を治す。
桂枝湯方内に於いて、黄耆二両を加う。
桂枝 芍薬 大棗 生姜 各四分五厘 甘草 三分 黄耆 七分五厘
八頁前半解説
標註 類聚方
千金は千金方。外臺は外臺秘要方。
傷寒雑病論には痙病に剛痙と柔痙があります。
剛痙には葛根湯、柔痙は括婁桂枝湯が当てられます。
剛痙は筋肉が強ばり脈が浮数(実症)、柔痙は身体は強ばりますが筋肉が柔らかく脈が沈で遅い(虚症)のを言います。
やや体が強ばるけれど脈が浮数で筋肉が柔らかい場合、桂枝加葛根湯を用います。
八頁後半
標註 類聚方
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甲錯の者とは、素問の所謂索澤にて、其の甚だしきに至り、肌膚枯セキし、小麸片の如き者起きるなり。
カンは、臀なり。弛は、張弛の弛にて、解惰なり。按ずるに、正気通天論に云う、大筋ゼン短、小筋弛長、
右六味、水八升を以って、煮て三升を取る。一升を温服す。水一合六勺を以って、煮て六勺を取る。須臾にして熱き稀粥一升余りを飲み、以って薬力を助け、温覆して微しく汗を取る。若し汗せずば、更に服す。
「黄汗の病、両脛自ずから冷え、仮令発熱すれば此れ歴節に属す。食し已わり汗出で、又身常に暮に盗汗出ず者、此れ労気なり。若し汗出で已わり、反って発熱する者は、久々にして其の身必ず甲錯す。発熱止まず者、必ず悪瘡を生ず。若し身重く、汗出で已わり、輒(やや)軽き者は、久々にして必ず身潤し、即ち胸中痛む。」又腰に従い以上に、必ず
八頁後半解説
標註 類聚方
小麸片とは皮膚がカサカサしてフケ状のものが出来ること。
張弛とは「一張一弛」の諺があり、良寛和尚がよく書いたと言われます。意味は気を緊張させることもあれば弛めることも必要だということ。
正気通天論は素問の文章。
歴節とは神経痛のような関節が痛む病気のこと。
暮とは夕方のこと。
労気という症状。
九頁前半
標註 類聚方
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ゼン短は拘と為す。弛長は痿と為す。此の條は当に解惰して痛むを以って之を解すべし。
○発黄黄汗の二症、其の発汗すべき者は、此の方を用う。温覆して以って汗を発すべし。子柄の云うに、当に汗を以って解すべき者は、此の方の主る所に非ずなり。誤りや。本條の方後の文に、豈明白に非ずや。
大黄、宋板に二両に作る。玉函に三両に作る。大実痛は、大黄汗出で、下には汗無し。腰カン弛痛し、物有り皮中に在るの状の如く、激しき者は食す能わず。身疼重し、煩躁し、小便不利す。「此れを黄汗と為す。」
○「諸病黄家、但其の小便を利す。仮令脈浮、当に汗を以って之を解すべし。」
為則按ずるに、黄耆は皮膚の水気を主治す。薬徴を考うべし。
桂枝加芍薬大黄湯
桂枝加芍薬湯證にして、停滞有る者を治す。
桂枝加芍薬湯方内に於いて、大黄一両を加う。
九頁前半解説
標註 類聚方
ゼン短のゼンはやわらかいという意味。 |
カンは臀部のこと。 |
九頁後半
一両は能く治する所に非ずして、宜しく斟酌して用うべし。 痢疾にて、発熱悪寒、腹痛し裏急後重する者を治す。 此の方に附子を加えて、桂枝加芍薬附子大黄湯と名づく。疝家にて、発熱悪寒し、腹中拘攣、痛み腰脚に引き、或いは陰卵欣腫、二便不利する者を治す。又乾脚気、筋攣骨痛し、或いは十指冷痺し、大便難き者を治す。 |
桂枝 大棗 生姜 各六分 芍薬 一銭二分 甘草 四分 大黄 二分 右六味。煮ること桂枝湯の如くす。 「本太陽病、医反って之を下し、しかるに因って」腹満し時に痛む者は、「太陰に属するなり。」桂枝加芍薬湯之を主る。大実痛する者は、桂枝加大黄湯之を主る。 為則按ずるに、桂枝加大黄湯は、桂枝加芍薬湯に因って、大黄を加うるものなり。故に方名は之に従う。 |
疝家とは水毒が原因となり、特に腹を中心として痛みがある病気のこと。 陰卵欣腫とは男性の睾丸が炎症を起こし腫れて痛むこと。 |
十頁前半
標註 類聚方
方名は、桂枝加芍薬生姜人参湯に作るは、玉函経に據る。 疝家にて、寒熱交作し、心下否硬し、脇腹攣急して嘔する者を治す。 処方の下に、当に某某證有るべしと云うは、本論に其の症の具わらざるを補いて、方用を広充し、以って治術を資くるなり。 |
桂枝加芍薬生姜人参湯 桂枝湯證にして、而して心下否硬し、身疼痛、及び嘔する者を治す。 桂枝湯方内に於いて、芍薬生姜各一両、人参三両を加う。 桂枝 大棗 人参 各六分 芍薬 生姜 各八分 甘草 四分 右六味。煮ること桂枝湯の如くす。 発刊後、身疼痛し、脈沈遅の者、 為則按ずるに、当に心下否硬し、或いは嘔の證有るべし。 |
十頁前半解説
標註 類聚方
資はたすくる、と読みました。 |
● 度量衡について説明してみましょう。
度量衡(長さ・容積・重さの単位)は時代によって大きな差がありました。
特に重さに関しては変化が激しい。
もともと中国から導入された概念で表記が同じですが中国と日本では違いがあります。
類聚方広義では前漢の時代に著された「傷寒論・金匱要略」に表記された分量に基づいて幕末時の日本の分量表示に改めています。
●中国では16進法による基本換算で重さを決めていますが10進法を使った換算法も有ります。この場合、1斤は10両と換算され500gにあてられます。類聚方広義では昔の分量を当時の尺貫法に基づき、銭(匁)や分を使って訂正しています。10進法の場合、1銭は5gとなります。現代の漢方処方量と比べると1銭=5gで換算したほうが近いように思えます。但し類聚方広義の煎じる水の量を考えますと1銭=3.75gとしたほうが妥当です。一合は1.8dlですので薬量・水量共に少なかったことがわかります。
尺と寸の語源とされる象形図↓
中国で継承されてきた年代別の度量衡表(量=容積は割愛しています!)