類聚方広義・第二木曜会  2008・3・13

今日は類聚方広義五頁前半の最終、桂枝加桂枝湯から始まりました。
解説の部分で明るい赤い字で書かれているところは狩野充徳先生から教示していただいた箇所です。
五頁前半
標註                                       類聚方

奔豚の説は、古来紛紛たり。率ね皆五臓の配当の説にして、影を捉え
 
桂枝加桂枝湯
桂枝湯證にして、上衝劇しき者を治す。


五頁前半解説

標註                                       類聚方
奔豚とは心悸亢進の状態だと言われています。 桂枝湯の桂枝は3両、桂枝加桂枝湯は更に2両の桂枝を加えるとあります。

五頁後半
標註                                       類聚方
風を捕えるの論のみ。父執藤田椿斎の曰く。奔豚は、悸して衝逆の甚だしき状を言うなり。金匱要略に曰く、奔豚病は、少腹より起こり、咽喉に上衝し、発作死せんと欲して、また止むと。豚と遯遁は、古字通用す。馬融長笛賦に、山水猥至、コウ瀑噴沫、奔豚トウ突。ケイ康の琴賦に、従横絡緯、奔遁相逼。以って徴すべし。此の説に之を得たり。按ずるに、呉崑の素問陰陽別論息賁の註に、曰く賁と奔は同じ。息賁は、息する気の奔迫なりと。斯れ亦以って奔豚の義を併発すべし。 桂枝湯方内に、桂枝二両を加う。
桂枝 芍薬 大棗 生姜 甘草 右五味、煮るに桂枝湯の如くす。
焼鍼にて其れ汗しむ。鍼所に寒を被り、核起こりて赤き者は、必ず奔豚を発す。気の少腹に従って心に上衝する者は、其の核上に灸するに、各々一壮、

桂枝加芍薬湯
桂枝湯證にして、而して腹拘攣する者を治す。


五頁後半解説
標註                                         類聚方
藤田椿斎は傷寒論集義の著書があるとされますが不明。
馬融は後漢の学者で今の西安に近く住み博学多才。
長笛賦は春秋戦国時代に梁の昭明太子が古文を集め編纂した『文選』によく出てきます。

「コウ瀑噴沫、奔豚トウ突。」とは高い滝から落ちてくる水が下の岩に当り水しぶきが跳ね返って空中に昇る状態のこと。
ケイ康は竹林の七賢者の一人。
「此の説に之を得たり。」とは藤田椿斎の言う通りだと尾台先生が納得するという意味。
傷寒論にも金匱要略にも同じ条文が出てきますが金匱要略では頭に「発汗後」の三字があり「上衝心者」の部分が「上至心」となっています。
焼鍼とは鍼を熱くして身体にあてて発汗する方法の事だろうとされますが詳細は不明。
焼鍼治療で細菌感染を起した部位に灸で火傷を起して炎症を抑える方法。

桂枝加芍薬湯は小建中湯の飴が入らない処方。
六頁前半
標註                                         類聚方
「太陰に属するなり。」の下に、旧刻には「桂枝加芍薬湯之を主る云々」の二十字を脱す。今之を正す。
此の方に附子を加えて、桂枝加芍薬附子湯と名づく。桂枝加芍薬湯症にして悪寒する者を治す。又腰脚攣急し、冷痛悪寒する者を治す。
朮附を加えて桂枝加芍薬朮附湯と名づく。風湿、痛風、脚気、黴瘡、結毒、骨節疼痛、腹中拘攣、小便不利、肢体腫起、ガン痺攣急等の症を治す。共に応鐘散、或いは七宝承気丸、時に梅肉丸を以って之を攻める。黴瘡、結毒、沈滞して動かざる者には、十幹丸、或いは七宝丸を、
桂枝湯方内に於いて、芍薬三両を加う。
桂枝 大棗 生姜 芍薬 甘草 右五味、煮るに桂枝湯の如し。
本太陽病、医反って之を下し、因って腹満時に痛む者は、太陰に属するなり。桂枝加芍薬湯之を主る。大実痛の者は、桂枝加大黄湯之を主る。
為則按ずるに、腹満して時に痛む者は、即ち拘急して痛むなり。是を以って芍薬を主と為すや。
六頁前半解説

標註                                         類聚方
桂枝加芍薬朮附湯は淋病や梅毒の症状に使っているのがわかります。当時、梅毒治療の特効薬が無かった為にこの処方を尾台先生はよく使ったのでしょう。七宝丸は軽粉(粗製塩化水銀=甘汞)の入った処方で駆梅剤として当時よく使われましたが副作用があります。応鐘散は別名=キュウ黄散といいセンキュウ末と大黄末で出来ています。 大塚敬節先生は傷寒論を読む上で「医」とか「反」という字が文頭に来た場合には「誤って」という意味があるとされます。
桂枝加大黄湯は桂枝加芍薬湯加大黄のことです。
●桂枝加芍薬湯に飴(麦芽飴)を入れますと小建中湯になります。小建中湯の加味方には当帰建中湯、黄耆建中湯、茯苓建中湯などがありますが帰耆建中湯は後世方の処方とされます。
飴は続薬徴に出てきますが、精神的にも肉体的にも強壮する目的に用いられます。
大塚先生は芍薬の分量を多くすると病位が変わると言います。
また、大黄を入れることで腹痛する場所が違うとも言います。
当時の大塚敬節先生に聞いたことを示してみましょう。



※桂枝加大黄湯とは桂枝加芍薬湯加大黄のことです。

桂枝加芍薬湯に関して大塚先生からはこんな事(応用)も聞いておりましたので参考にしてください。

@熱が下がって腹が柔らかくなった時の腹痛、また腹がパンパンに張って腹痛し下痢をしない場合、
A熱があっても、或いは解熱後でも腹が張る場合、腹を押さえると痛みがあり大小便に変化のない時、
B渋り腹で大便が出そうで出ない時、
C便意があって少し出ると腹痛する時、
D腰痛、原因不明の腹痛、子供の腹痛、虚症で軽症の盲腸炎で腹が張り痛む者、痔ろう、脱肛などに使う。


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