類聚方広義・第二木曜会  2008・11・13

●11月13日は十八頁前半の桂枝甘草竜骨牡蠣湯から、二十頁後半の桂枝麻黄各半湯まで読みました。

桂枝甘草竜骨牡蠣湯より


十八頁前半








此の方、本は於くに桂枝甘草湯に出で、桂枝僅僅一両は、疑うべし。故に余は常に四両を用う。学者之を試せ。
傷寒、脈浮、医の火を以って之を迫劫せば、「亡陽」必ず驚狂し、起臥安からざる者、
○火邪の者、
為則按ずるに、当に胸腹の動有り、而して衝逆の證有るべし。



桂枝甘草竜骨牡蠣湯
胸腹の動有りて、急迫する者を治す。
桂枝 一両 
一銭二分 甘草 竜骨 牡蠣 各二両 六分 右四味、水五升を以って、煮て二升半を取り、滓を去り、八合を温服す。水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。

十八頁前半解説
標註                                            類聚方




十八頁後半
標註                                       類聚方
證は具わらざるなり。疑うに脱誤有り。且つ火逆を豈必ず之を下すと、宜しく症を審らかにし之を治すべし。

中風傷寒、棄て置いて日を渉り、或いは発汗の後、邪気猶纏繞して去らず、発熱悪寒し、咳嗽或いは喝しする者は、宜しく巳下三方を撰用すべし。
瘧疾にて、熱多く寒少なく、肢体惰痛する者、五六発の後に、桂枝二麻黄一湯、桂枝麻黄各半湯を択び、先ず其の発に先んじ、温服して大いに汗を発すれば、則ち一汗にて則癒ゆ。若し渇する者は、桂枝二越婢一湯に宜し。三方は皆截瘧の良剤なり。
火逆は之を下す、焼鍼に因って煩躁する者は、


桂枝二麻黄一湯

桂枝 一両十七銖 八分五厘 芍薬 生姜 各一両六銖 大棗 五枚 各六分 麻黄 十六銖 杏仁 十六個 各三分五厘 甘草 一両二銖 五分五厘

右七味、水五升を以って、先ず麻黄を煮て一二沸し、上沫を去り、諸薬を内れ煮て二升を取る。滓を去り、一升を温服す。
 水一合
↓                                               ↓
十八頁後半解説
標註                                            類聚方

纏繞=テンジョウ=まつわりつく
瘧疾=マラリアのような熱性疾患
火逆とは火傷などのこと、
焼鍼は発汗の治療法だろうと、
麻黄は煎じると泡のようなものが浮くのでそれを去って再煎する、

 十九頁前半
標註                                       類聚方

桂枝湯を服し、以下十八字は、白虎加人参湯の條文、錯乱混入するなり。説は桂枝湯標を見よ。


風湿、痛風、初起寒熱休作し、肢体疼重、或いは攣痛、或いは走注腫起する者、此の方を以って汗を発し、後に加朮附湯を与うべし。応鐘散、ズイ賓丸等を兼用す。
五勺を以って六勺を取る。 日に再服す。
桂枝湯を服し、大いに汗出で、脈洪大の者、桂枝湯を与えるに前法の如くす。若し形瘧の如く、日に再発する者は、汗出で必ず解す。

桂枝二越婢一湯
桂枝湯證多く、越婢湯證少なき者を治す。
桂枝 芍薬 甘草 各十八銖 四分五厘 生姜 一両三銖 七分 大棗 四枚 六分 麻黄 十八銖 四分五厘 石膏 二十四銖 六分
↓                                               ↓
十九頁前半解説
標註                                            類聚方
風湿=神経痛のような病気。
痛風=神経痛のようで痛みが動く病気。
肢体疼重=多発性関節リウマチのような病気。
走注腫起=方向性があって腫れる病気。
加朮附湯=桂枝加朮附湯と桂枝二越婢一湯加朮附湯の二説あり。

 十九頁後半
標註                                       類聚方







痘瘡、熱気灼くが如く、表鬱して見點難く、或いは見點稠密、風疹交出、或いは痘起脹せず、喘咳して咽痛む者、此の湯に宜し。
右七味、咀し、水五升を以って、麻黄を煮て一二沸、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て二升を取り、滓を去り、一升を温服す。 水一合五勺を以って煮て六勺を取る。
「太陽病、」発熱悪寒、熱多く寒少なし、脈微弱の者、「此れ陽無きなり。発汗すべからず。」

桂枝麻黄各半湯
桂枝湯麻黄湯二方の證相半ばなる者を治す。
桂枝 一両十六銖
 六分五厘 芍薬 生姜 甘草 麻

十九頁後半解説
標註                                            類聚方

見點=赤い発疹が出ること。
風疹=三日ばしか。


 二十頁前半
標註                                       類聚方




自可欲は、不可発汗篇、脈経、竝びに続自可に作るは、是なり。
以上二方の例に據って、桂枝麻黄各半湯に宜しの八字は、当に癒えんと欲すと為すの下に在るべし。
已に瘧状の如く、発熱悪寒、
黄 各一両 大棗 四枚 各四分 杏仁 十四個 五分
右七味、水五升を以って、先ず麻黄を煮ること一二沸、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て一升八合を取り、滓を去り、六合を温服す。水一合六尺を以って、煮て六勺を取る。
「太陽病、之を得て八九日、瘧状の如く、」発熱悪寒、熱多く寒少なし、其の人嘔せず、清便自ずから可ならんと欲す。一日二三度発し、脈微にして緩なる者は、癒えんと欲す為りや。「脈微にして悪寒の者は、

二十頁前半解説
標註                                            類聚方

清は「かわや」という意味。



二十頁後半
標註                                       類聚方
熱多く寒少なし云々は、癒えんと欲す為りやと云うに、而して又面色反って熱色有る者、未だ解すを欲せざるや云々と云う。前後矛盾し宜しく刪去すべし。



宋板、甘草二両に作る。今之に従う。
悸は説文に曰く、心動なり。活人書に曰く。悸気は、動悸也。
虚労裏急云々、此の症に余毎に黄耆建中湯を用う。其の効は小建中湯に勝る。学者之を試せ。
此れ陰陽倶に虚し、更に発汗し更に下し更に吐すべからざるなり。」面色反って熱色ある者は、未だ解すを欲せざるなり。其れ少し汗を出すを得る能わざるを以って、身必ず痒し、

小建中湯
裏急し、腹皮拘急し、及び急痛する者を治す。
桂枝 生姜 各三両 大棗 十二枚 各四分五厘 甘草 三両 三分 芍薬 六両 九分 膠飴 一升 四銭
右六味、水七升を以って、煮て三升を取る。滓を去り、膠飴を内れ、更に微火に上げ、消解し、一升を温服す。 水一合四勺を以って、煮て六勺を取り、滓を去り、

二十頁後半解説
標註                                            類聚方




余談!

桂枝甘草竜骨牡蠣湯の講義中、大塚先生はこんな事を言われます。
@バセドウ氏病の患者で炙甘草湯が服用できない人には桂枝甘草竜骨牡蠣湯に半夏厚朴湯をあわせ用いることがある。
A癌末期を患う代議士の家族から往診を頼まれ六君子湯を処方するが一服服用して次の日に亡くなったことがあった。どんなに柔らかい漢方薬でも服後直ぐに死亡したら医者のせいになるから気をつけなさい!という事でした。叢桂亭医事小言を著した原南陽も同じ事例があったのか七巻に不及飲という処方を紹介しています。その原文と解説を載せてみます。読みと解説は狩野先生の助言に頼りました。

叢桂亭医事小言 七巻↑

読みと解説↑

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