類聚方広義・第二木曜会  2008・10・9

●10月9日は十五頁後半の桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯から、十八頁前半の桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣湯まで読みました。

桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯より
十五頁後半
標註                                       類聚方
防己去石膏加茯苓芒硝湯の諸方の如く、其の去加する所は、皆臣佐の薬品に過ぎず。以って證(あか)しとすべしや。後に徐霊胎の説を読むに、亦余の意と合して符契の如し。益して見之を愆(あやま)らずを信ず。成無巳も亦曰く、頭項強痛、翁翁発熱、汗下を経ると雖も、邪気仍ほ表に在るなりや。心下満微痛し、小便自利するは、則ち結胸を成さんと欲す。今外症未だ罷(や)まず、汗無く小便不利せば、則ち心下満して微痛するを、停飲と為すなり。桂枝湯を与えて以って外を解すに、茯苓白朮を加え、以って小便を利し、留飲を行(めぐ)らすなり。是れに由り之を観れば、成氏の註する所の本、去桂の 右六味、煮ること桂枝湯の如く。
桂枝湯を服し、或いは之を下し、仍(しきり)に頭項強痛し、翁翁と発熱し、汗無く心下満し微しく痛み、小便不利の者を、
 為則按ずるに、当に心下悸の證有るべし。

桂枝去芍薬加麻黄附子細辛湯
桂枝去芍薬湯、麻黄附子細辛湯、二方の證の相合する者を治す。
桂枝 生姜 各三両 大棗 十二枚 各六分 甘草
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十五頁後半解説
標註                                            類聚方

麻黄はマオウ科のマオウの地上部。エフェドリンが含まれる。鎮咳作用があり喘息の治療薬。その他発汗・利尿作用もある。

細辛はウマノスズクサ科のウスバサイシンの根(花のメシベの柱頭は六つ)。局所麻酔作用・鎮痛作用がある。

 十六頁前半
標註                                       類聚方

字無きや必せり。説は拙著の橘黄医談に詳らかなり。

気分以下十六字、此れは枳朮湯症なり。医宗金鑑に、以って衍文と為せるは、是なり。且つ気分の二字は、仲景の口気に似ざる。今傍例に據(よ)りて之を試すに、上衝頭痛、発熱喘咳、身体疼痛、悪寒甚だしき者、之を主る。子柄の気分血分の論は、含糊決せず、且つ薬徴の文義を解せずして、謾(あざむ)くに妄傅会の説と為して、無用の弁と謂うべしや。○老人秋冬の交毎に、痰飲咳嗽、胸背脇腹攣痛、悪寒する者有るに、此の方宜し。
麻黄 細辛 各二両 四分 附子一枚 二分
右七味、水七升を以って、麻黄を煮て、上沫を去り、諸薬を内れ、煮て二升を取る。分温し三服す。水二合を以って、煮て六勺を取る。当に汗出ずるべし。虫の皮中を行くが如ければ、即ち癒ゆる。
「気分、」心下堅く、大きさ盤の如し、邊(ほとり)旋杯の如し。水飲の作るところ、
 為則按ずるに、證具わらざるなり。此の方は桂枝去芍薬湯、麻黄附子細辛湯との合なり。證は当に二方の下に於いて求めるべしや。薬徴に弁有り。
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十六頁前半解説
標註                                            類聚方
金匱要略の水気病の最後に桂枝去芍薬加麻黄細辛附子湯と枳朮湯とが列記されているが条文は同じことになっている。ただ桂枝去芍薬加麻黄細辛附子湯の条文の初めに「気分」の字句があるのが違いとなっている。
雉間子柄の気分と血分の説(@A)は口に糊を含んだようで分かりにくく理解できないと尾台榕堂は言っている。
盤とはおぼんの大きさの器。

 十六頁後半
標註                                       類聚方

南呂丸を兼用す。


p莢は、猪牙と称する者を用うべし。千金に、二枚を二両に作る。今之に従う。○咳する者、大率ね上気胸満す。桂枝去芍薬湯は、以って上気胸満を治す。更にp莢を加え、以って涎沫を駆るなり。
肺痿とは、咳して寒熱し、脈数にして、濁唾涎沫を吐し、或いは口燥ぎて寝汗し、痰中に血の有る者を謂う。

稟性薄弱の人、色欲過多なれば、則ち血精減耗し、身体羸
桂枝去芍薬加p莢湯
桂枝去芍薬湯證にして、而して濁唾涎沫を吐す者を治す。
桂枝去芍薬湯方内に於いて、p莢二枚を加う。
桂枝 生姜 大棗 各七分五厘 甘草 p莢 各五分 右五味、煮るに桂枝湯の如くす。
「肺痿」涎沫を吐すに、

桂枝加竜骨牡蠣湯
桂枝湯證にして、而して胸腹に動有る者を治す。

十六頁後半解説
標註                                            類聚方

p莢とはサイカチの実莢ことで猪の牙のように曲がったものがいい。マメ科の樹木でサポニンを含み昔は石鹸代わりにしていた。サポニンには去痰作用がある。
稟性とは生まれつきの性質、体格という意味。


 十七頁前半
標註                                       類聚方
痩、面に血色無く、身常に微熱有り。四肢倦怠し、唇口乾燥し、小腹弦急し、胸腹の動甚だし、其の極まりや死せずして何を待たん。長く此の方を服して、厳しく閨房を慎み、保嗇調摂すれば、則ち以って骨を肉し生を回すべけんや。
婦人心気鬱血し、胸腹の動甚だしく、寒熱交作し、経行常に期を愆り、多夢驚タし、鬼交漏精して、身体漸と羸痩に就き、其の状恰も労サイに似る。孀婦室女にて、妄動遂げられず者に、多く此の症有り。此の方に宜し。
此の方、及び桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣湯、桂枝甘草竜骨牡蠣湯の、三方は、
桂枝湯方内に於いて、竜骨牡蠣各三両を加う。
桂枝 芍薬 大棗 生姜 竜骨 牡蠣 各四分五厘 甘草 三分
右七味、煮るに桂枝湯の如くす。
夫(それ)失精家にて、小腹弦急し、陰頭寒く、目眩髪落し、脈は極めて虚し、遅は、清穀亡血失精す。脈に諸動にて微しく緊を得るは、男子は失精し、女子は夢に交わる。
為則按ずるに、当に胸腹の動證有るべし。

十七頁前半解説
標註                                            類聚方

保嗇調摂とは身体を休ませ安静にするという意味。
孀婦(そうふ)とは未亡人。
室女(しつじょ)とは嫁に行かない女性。




十七頁後半
標註                                       類聚方
所謂癇家の、上衝眩運耳鳴り、胸腹の動悸、夢寐驚起、精神恍惚、或いは故無く悲愁する者に、症に随って撰用すれば、各効有り。若し心下痞し、大便難の者は、瀉心湯を兼用す。又火傷湯溌にて、大熱口渇し、煩躁悶乱して、死せんと欲す者、及び灸の後発熱煩冤の者も、亦三方を撰用す。或いは瀉心湯、黄連解毒湯等を兼用す。 桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣湯
桂枝去芍薬湯證にして、而して胸腹の動激しき者を治す。
桂枝 三両 生姜 三両 大棗 十二枚 蜀漆 三両 各四分五厘 甘草 二両 三分 牡蠣 五両 七分五厘 竜骨 四両 六分 
右七味、水一斗二升にて、先ず蜀漆を煮て、二升を減ず。諸薬を内れ、煮て三升を取る。滓を去り、一升を温服す。水一合四勺を以って、煮て六勺を取る。

十七頁後半解説
標註                                            類聚方

蜀漆はユキノシタ科のジョウザンアジサイとしている。大塚敬節先生は蜀漆がなくてもよく効くと言っている。
牡蠣はカキの殻のことで新しいものは異臭がしたり服用して発熱することがある。よく火を通したものがいい。



十八頁前半






此の方、本は於くに桂枝甘草湯に出で、桂枝僅僅一両は、疑うべし。故に余は常に四両を用う。学者之を試せ。
傷寒、脈浮、医の火を以って之を迫劫せば、「亡陽」必ず驚狂し、起臥安からざる者、
○火邪の者、
為則按ずるに、当に胸腹の動有り、而して衝逆の證有るべし。



桂枝甘草竜骨牡蠣湯
胸腹の動有りて、急迫する者を治す。
桂枝 一両 一銭二分 甘草 竜骨 牡蠣 各二両 六分 右四味、水五升を以って、煮て二升半を取り、滓を去り、八合を温服す。水一合二勺を以って、煮て六勺を取る。日に三服す。

十八頁前半解説
標註                                            類聚方




登場する生薬!


ウスバサイシン(広島県)


細辛  北朝鮮産


竜骨 古代動物の骨の化石


牡蠣=天然カキ殻(淡路島産)

p莢はサイカチの実の莢ですが今年は豆が出来ていませんでした。
そこでサイカチ(正確にはアメリカサイカチ)の樹皮に出来る刺を載せます。
p角刺と言って托裏消毒飲と言う処方に配剤されます↓


p角刺

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